No.268 岡本裕一朗氏の著書[人工知能に哲学を教えたら…]から…

ITコラム
2018年9月26日

ISO 飛鳥 石橋一史によるITコラム
~帝国ニュースに掲載されたものを紹介していきます~

氏は哲学・倫理学者で玉川大学教授、研究テーマは「哲学とテクノロジー」、この本の「帯紙」には、「1人を殺せば5人が助かるとき、あなたはスイッチを押せますか?」とあった。

人口知能[AI]の驚異的な進化は、チェス・将棋・囲碁を凌駕し、いよいよ自動運転車が現実になる現代、この「帯紙」の問いは強烈だ。さらに、自動運転の制御プログラムの課題として、『このまま直進すると子供を一人はねとばす、そのとき車の進行を変えると壁に激突し運転者は死亡するとした場面で[AI]にはどのように判断(選択)させるべきか…』とあった。これは人間でも答えることはできるものではないが…

倫理観、正義、哲学、これらは有機生物である人間のもので、無機質のAIには存在しないと考えていた。しかし、この問いかけのように、自動運転の進化に伴う微妙な制御プログラミングには、これら倫理観、正義、哲学の観点が必要であるとの見識なのだろう。

技術のめざましい進歩に伴い、識者からは様々な課題が提言される。ただ、自動運転技術で事故率が大幅に低減することを議論の前提としなければ、単に主題を外れた学術論争になってしまうとも考える。いろんな見解の中、この書は一読の価値がありそうだ。