No.309 JAXA宇宙航空研究開発機構物語2

ITコラム
2019年8月7日

ISO 飛鳥 石橋一史によるITコラム
~帝国ニュースに掲載されたものを紹介していきます~

 1955年代、東京大学の糸川英夫教授が実験を始めた[ペンシルロケット]から50年、教授の名前をつけた小惑星[イトカワ]を目指し、宇宙航空研究開発機構JAXAが2003年に放った[はやぶさ]は惑星の破片を採取し、7年の時を経て地球に送り届けた。この距離60億Kmは、光速でも30分以上かかる。

今回のミッションで重要な要素は「マイクロ波放電式イオンエンジン」、このエンジンは1円玉を動かす程度のかすかな力だが、驚異的な持久力を誇る。60Kgの燃料キセノンで、7年間、60億Kmの航海を成し遂げた。開発したのは東京大学の國中均「くになかひとし」教授。子供のころは電気製品の分解を趣味としていたが、対象物の多くは復旧できず親から怒られていた。そして彼は、宇宙戦艦ヤマトに登場する真田技師長のせりふ、「こんなこともあろうかと…」が好きだった。

計画より3年も長い運転をしてきた[はやぶさ]のエンジンが限界に達し、4台すべてが停止、みんながあきらめかけたとき、國中は4つのエンジンの中で壊れていない部品を組み合わせ、1つのエンジンとして作動させる[クロス運転]を提案。彼は「こんなこともあろうかと」必要な回路を予め仕込んでいたのだ。失敗続きだった均少年は、やがて[はやぶさ]の窮地を救った。